更新日:2007/3/19
病理

クラッベ病 (Krabbe Disease)
(グロボイド細胞ジストロフィー、globoid cell leukodystrophy)
脳の神経線維が変性する、遺伝性で進行性の病気。
 
リソソーム酵素であるガラクトセレブロシダ−ゼ(galactocerebrosidase:GALC)の欠損により、中枢、末梢のミエリン(神経線維を外側からくるんで、電気が流れるのに必須の構造)形成細胞が障害を受け、脱髄(ミエリンが破壊されること)を引き起こす疾患です。(常染色体劣性遺伝)
 
GALCが欠けているため、本来は脳内で代謝されるはずの成分「サイコシン」(GALCの作用する基質の一つで、分解されないと強い毒性がある)を分解し排出することができず、蓄積していきます。
サイコシンは細胞毒性が極めて強いため、わずかの蓄積でも神経細胞が破壊され、中枢神経、特に脳の白質(脳の神経線維がぎっしり通っているところ)の働きに影響をあたえます。
その結果、筋肉を正常に動かす神経などが機能に異常をきたして、運動能力が衰えていきます。そのためちゃんとミルクを飲み込んだりすることができなくなり、咳をして肺をきれいにすることも難しくなるので、感染に弱く、肺炎などにかかることが多くなります。
ステージが進むと脳幹にも影響が及び、脳幹がつかさどる、呼吸や体温調整などといった反射的機能も衰えてきます。
 
発症する年齢の違いによって、乳児型(3〜6ヶ月)、晩期乳児型(7ヶ月〜2歳)、若年型(3歳〜9歳)、成人型(10歳〜)に分類されています。
発症年齢の違いは、GALC酵素活性の違いによると考えられていますが、症例のほぼ9割までが「乳児型」と言われています。
最近の研究に於いて、日本人の発症時期の割合に上記と異なる結果が示されています。
この内容は近い時期に修正される可能性がありますのでご注意下さい。

患者はアメリカ、ヨーロッパをあわせて、新生児の十万人に一人の割合で報告例がある、どの人種、民族にも存在する病気です。


病気の進行
 
患者の約90%は、生後6か月までに発症します。残りの10%は6ヶ月以降−50歳代くらいまでのうちに発症します。

最近の研究に於いて、日本人の発症時期の割合に上記の割合と異なる結果が示されています。
この内容は近い時期に修正される可能性がありますのでご注意下さい。

一番多く見られる新生児発症型の場合、進行は概ね3つのステージに大分されるようです。
 
<ステージ1>
最初の2−3ヶ月はまず大体普通に成長していきます。
その後続くステージ1は、いらいらととても機嫌が悪く、激しく泣くようになる、運動能力の発達が滞る、体を硬くする、病気に感染してないようなのに高熱が出たりする、ミルクを飲むのが困難になるので体重が増えない、又は減少が見られる・・・など。
 
<ステージ2>
体を反らせる、強直型けいれん、原因不明の高熱、眼球運動が緩慢になる、運動・知的能力の退行がおこります。
出来ていたことが出来なくなったり、発達が停滞します。
 
<ステージ3>
視力・聴力を失い、周囲の認識がなくなる。
発症からここまで、数ヶ月から1年くらいかかるのが平均のようです。
 
実際、ここら辺はちょっと怪しいかもしれません。
経過には個人差があるようで、ご家族からは、「最後まで刺激(本を読んだり、お母さんに抱かれたり)に対する反応があった」とお聞きする事もありました。
確かに笑ったりする筋肉のコントロールなどは衰えているかもしれませんが、ちょっとした反応を認識することができるのは、やはり24時間一緒に過ごしている家族なので、医学的な観測より親の体験談の方が「ここらへんは」鋭いのではないかと思われます。
 
発症から1年くらいで、肺炎や気管支炎などを直接原因として亡くなるケースが多いのですが、それより早く亡くなる赤ちゃんも、もっと長生きして今では11歳になる子もいます。
 
 
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生後6ヶ月以降に発症する、幼児−成人発症型では、いつ発症するか予測不可能で、進行についても様々なようです。
さらに、同一家系でも発症時期が全然違うケースもあるようです。
 
 
 
監修 大阪大学大学院医学系研究科小児科学
酒井規夫 先生
 
文責 クラッベ病患者とその家族の会
事務局 岩前紳一

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